我々は、不安定状態の複合性の新しい解釈を提案し、その解釈を用いて閾値近傍の共鳴状態の内部構造を研究した。近年、エキゾチックハドロンが閾値近傍に多数発見されていることから、閾値近傍の状態の内部構造に興味がもたれている。状態の内部構造を定量的に特徴づける量である複合性を用いた研究から、閾値より下の浅い束縛状態は低エネルギー普遍性より複合的な成分が支配的であると知られている。一方で、閾値より上の共鳴状態の複合性は定義より複素数になり、内部構造の確率的解釈が容易でないという問題があった。この研究は、複素数の複合性の確率的解釈を提案し、それを用いて閾値近傍の共鳴状態の性質を明らかにすることを目的とする。 まず、有効レンジ展開を用いて閾値近傍の共鳴状態を記述し、共鳴状態の性質を低エネルギー普遍性の観点から議論する。次に、共鳴状態の不定性を考慮した内部構造の分類方法を導入し、複素数の複合性の確率...
When an exotic hadron locates near the threshold with channel couplings, the internal structure of the exotic hadron is related to the scattering length. To incorporate the threshold effect, the Flatte amplitude has been often used to determine the scattering length. It is however known that an additional constraint is imposed on the Flatte amplitude near the threshold. In this work, we...
ハドロン間相互作用を調べるための散乱実験はこれまで行われているが、現在の技術では全てのハドロンでデータを得られるわけではない。ハドロン散乱実験が難しい系において、高エネルギー衝突実験における2粒子間相関関数が有効であることが近年注目を集めている。特にエネルギーが閾値の下にある束縛状態を持つ2粒子間相関関数については研究が盛んに行われている。本研究ではエネルギーが閾値の上にあり不安定な共鳴状態に着目し、共鳴状態を含む散乱振幅を記述するために有効レンジ展開を用いる。得られた散乱振幅から相関関数を計算し、共鳴状態が相関関数に与える影響を調べる。最後にALICE実験で得られたデータをもとに実際のハドロンへ応用し、計算の妥当性を議論する。