Speaker
Tomona Kinugawa
(Tokyo Metropolitan University)
Description
近年の高エネルギー実験において散乱の閾値近傍にエキゾチックハドロンが多数発見されていることから、閾値近傍状態の内部構造の研究が盛んに行われている。しかしそれらの研究では、強い相互作用より弱いクーロン力は無視されることが多かった。一方、閾値近傍の低エネルギー領域では、クーロン力の寄与が重要であると期待される。我々は、短距離力とクーロン力が共存するs波散乱の閾値近傍状態の内部構造を解明することを目標とする。有効場の理論モデルによる低エネルギー散乱理論を用い、クーロン力が引力と斥力両方の場合の固有状態を記述する。固有エネルギーのクーロン散乱長依存性を調べた結果、クーロン斥力では束縛状態と共鳴状態は連続的につながる一方、引力の場合は両者が連続的につながらず、共鳴状態はvirtual状態とつながることを示した。さらに、波動関数におけるハドロン分子状態の重みである複合性を計算することで、クーロン斥力がはたらく系の束縛状態の内部構造を定量化する。短距離力に比べてクーロン力の影響が小さい場合は、閾値近傍では複合性が1の近くまで増大し、短距離力の場合と同様の現象が起こる一方、クーロン力の影響が大きい場合は、閾値近傍でも複合性が増大しないことを定量的に示した。