場所:
東北大学先端量子ビーム科学研究センター
日時:
2024 年 11 月 20 日 (水)、21 日 (木)
趣旨:
強い力で相互作用するハドロンは、高々 3 個のクォークからなる状態と考えられてきたが、Tcc状態、Pc 状態、ダイバリオン d* 状態等の 4 個以上のクォークからなるエキゾチックなハドロンが存在する可能性が次々と報告されている。これらエキゾチックハドロンの内部構造を解明することは、クォークの動力学である QCD の非摂動現象を対象とするハドロン物理における重要な課題である。非摂動 QCD を直接解くことは困難であるため、エキゾチックハドロンの正体の解明には、実験研究とそのデータの理論的解析、そして格子 QCD シミュレーションの連携研究が鍵となる。国内の実験研究の今後の動向として、J-PARC における中間子ビームを用いたダイバリオンやハドロン共鳴状態の分光計画や、ELPH や SPring-8 における光生成反応を用いたエキゾチックハドロンの探索等が挙げられる。国内外で期待される新しい実験データの物理解析のためにも、実験・理論の継続的な議論は欠くことはできない。また、近年話題となっている陽子の荷電半径測定においても、RARiSで進められている低エネルギー電子散乱実験や格子QCDによる計算結果など、実験と理論の両面からの発展が期待されていいる。
本研究会では実験研究者、理論研究者、格子 QCD シミュレーション 研究者の参加者を募り、ハドロン物理と核多体系、中間子原子核・原子、ハイパー核・原子、クォーク核物質、QCD 物性等の関連する先端的な研究トピックについて幅広い視点から議論を行う。
なお、研究会での講演は基本的には日本語を想定していますが、ご講演者には英語でスライドをご準備していただくようにお願いいたします。
登録等締切日:
共催:
先端量子ビーム科学研究センター 電子光理学研究拠点
協賛:
科研費 特別推進研究(A) 22H04917
科研費 基盤研究(A) 22H00122
科研費 基盤研究(B) 22H01225、22H01242
科研費 基盤研究(C) 24K07020
"We take a brief look at some of the important papers of lattice QCD
studies of diquarks. We will then change to our recent lattice QCD
studies of diquarks by using an extended HAL QCD's potential method. We will finally make a comment on the relation among these studeis."
"ハドロンの内部構造を理解する上で便利な指標として複合性が議論されている。複合性は、粒子状態を複合状態と素粒子状態の重ねあわせとして書いたときに、粒子状態の割合として量子力学的に定義される。本講演では、我々のグループで定式化した散乱振幅を用いた方法[1]についてその有用性と問題点を解説する。その後、本方法における最近の進展[2]について議論を行う。
[1] T. Sekihara, T. Hyodo, D. Jido, Prog. Theor. Exp. Phys. 2015, 063D04 (2015).
[2] Z. Yin, D. Jido, arXiv: 2312.13582 [hep-ph]."
複合性および素粒子性と呼ばれる量を用いて、包括的にエキゾチックハドロンの内部構造を議論する方法が提唱されている。その際、裸の素粒子状態は直接観測できないため間接的に複合性を計算する必要があるが、その計算手法はいまだに確立していない。本研究では、束縛状態に加え、素粒子状態が影響しない低エネルギー領域での散乱の情報を用いることで、複合性の下限を与える手法を提唱する。そして、HAL QCD法で計算された束縛状態および散乱データから、上の手法を用いて複合性の計算を行う。
ハドロン間相互作用を研究する手法として,近年HAL QCD法は一般に信頼に足りる方法として確立された.実際,核力ポテンシャル計算などで成功を収めており,今後発表されるであろう数値計算の結果や,計算手法自体の改良も期待される.しかし,Lambda1405を束縛状態に持つKbarNダイナミクスなど,一部のハドロン間ポテンシャルを計算した場合には原点周辺で特異な振る舞いを示す.本研究では,HAL QCD法によるこのような振る舞いの原因を明らかにするため,ハドロン間相互作用の有効模型でNBS波動関数を計算し,HAL QCD法のポテンシャルと比較する.
近年の高エネルギー実験において散乱の閾値近傍にエキゾチックハドロンが多数発見されていることから、閾値近傍状態の内部構造の研究が盛んに行われている。しかしそれらの研究では、強い相互作用より弱いクーロン力は無視されることが多かった。一方、閾値近傍の低エネルギー領域では、クーロン力の寄与が重要であると期待される。我々は、短距離力とクーロン力が共存するs波散乱の閾値近傍状態の内部構造を解明することを目標とする。有効場の理論モデルによる低エネルギー散乱理論を用い、クーロン力が引力と斥力両方の場合の固有状態を記述する。固有エネルギーのクーロン散乱長依存性を調べた結果、クーロン斥力では束縛状態と共鳴状態は連続的につながる一方、引力の場合は両者が連続的につながらず、共鳴状態はvirtual状態とつながることを示した。さらに、波動関数におけるハドロン分子状態の重みである複合性を計算することで、クーロン斥力がはたらく系の束縛状態の内部構造を定量化する。短距離力に比べてクーロン力の影響が小さい場合は、閾値近傍では複合性が1の近くまで増大し、短距離力の場合と同様の現象が起こる一方、クーロン力の影響が大きい場合は、閾値近傍でも複合性が増大しないことを定量的に示した。
We examine a pattern of dynamical chiral symmetry breaking making use of the vacuum energy density as a function of the quark condensate. We compute the vacuum energy density and the quark condensate in the interacting instanton liquid model (IILM) with three-flavor quarks, which is a phenomenological model to describe the QCD vacuum. These computations are performed by using a numerical simulation of the canonical IILM, i.e., the number of instantons and anti-instantons are fixed. We find that chiral symmetry is broken in the chiral (U(1)_A) anomaly assisted way in the IILM with three-flavor dynamical quarks. Comparing the full and the quenched IILM calculations, we also find the instanton-quark interaction included in the IILM plays a crucial role for the chiral symmetry breaking.
Hierarchical structures in quantum many-body systems often involve phase transitions and crossover phenomena in the intermediate regime. To understand their microscopic mechanisms, we discuss one of the most famous crossover phenomena in many-body physics, that is, Bose-Einstein-condensate (BEC) to Bardeen-Cooper-Schrieffer (BCS) crossover, realized in ultracold atoms. Moreover, the three-body counterpart of the BEC-BCS crossover associated with three-body bound states and its possible indication to nuclear physics will be presented.
"カイラル対称性の自発的破れは、QCDにおいて特徴的な物理の一つである。カイラル対称性の破れは、有限密度では対称性の部分的回復が起こることが示唆されている。部分的に回復した相において、どのような物理が繰り広げられているかはとても興味深い。しかし、標準模型におけるQCDでは、漸近的自由性のため低エネルギーでの摂動展開が難しいとされている。そのため、カイラル対称性の自発的破れを調べるためには、摂動展開以外のアプローチが必要である。
線形シグマ模型は、ハドロン有効模型のうちの1つである。その特徴としては、ハドロンの自由度を持っていることや、Landau理論などに類推される4次型のポテンシャルによって自発的対称性の破れを記述できることなどが挙げられる。これまで、線形シグマ模型はさまざまな解析がすでになされている。[1]の先行研究では、考えられる4次までの相互作用を導入する拡張を行っている。
本研究では、axial vector mesonの性質を十分に説明できるように、可能な限りパラメータ数を減らした線形シグマ模型を提案した。さらに、本研究に特徴的な、Flavor SU(3)対称性の破れをクォーク質量によって導入した項を考慮に入れた。また、そのモデルを用いて、質量などをインプットに崩壊幅の計算を行った。
[1]Parganlija, Denis and Giacosa, Francesco and Rischke, Dirk H., Phys.Rev.D 82 (2010) 054024"
"Xi(1620) and Xi(1690) have recently been actively studied both experimentally and theoretically.
We have constructed the models which are based on the Belle and ALICE experimental results, with the chiral unitary method previously.(できれば自分の論文を)
In this study we discuss the physical origin of poles in the scattering amplitude by extrapolating different models.
We also study the near Kbar-Lambda threshold pole trajectory with different channel coupling strength in the Weinberg-Tomozawa potential.
With this analysis we aim to clarify the physical properties of the eigenstates in the constructed scattering amplitudes."
"Near-threshold exotic hadrons are studied actively. In order to understand the nature of them, it is necessary to determine the scattering length from experimental data, because the scattering length governs the near-threshold scatterings. The cusp structure of cross sections reflects the value of the scattering length. In this work, we study the behavior of threshold cusp in multi-channel scattering using the general scattering amplitude near the threshold[1].
[1] K. Sone and T. Hyodo, arXiv:2405.08436 [hep-ph]."
ハドロンの束縛状態や散乱を調べるためにハドロン間の相互作用をポテンシャルとして扱う。強度が実数のポテンシャルを用いると束縛状態を扱うことができ、その固有運動量は複素運動量平面に解析接続された散乱振幅の極として表される。しかし殆どのハドロンは不安定であるため、ポテンシャルに虚部を入れると束縛状態に幅が生じることを利用し複素ポテンシャルを用いて解析を行う。
本研究ではポテンシャルの実部を変化させた時の散乱振幅の極の軌跡について、ポテンシャルに虚部を入れた時の影響を調べる。また、数値計算から厳密に得られた極の値と有効レンジ展開で見積もられた値を比較し、有効レンジ展開の妥当性とその性質について議論する。
I will discuss the self-consistent studies of M1 radiative decays of quarkonia in the light-front quark model. The operators with different polarizations are derived, and the model predictions for the transition form factor and decay widths are computed. A comparison with experimental and lattice QCD data will also be discussed.
強い磁場の下ではチャーモニウムのJ/Ψとηcが混合し、質量スペクトルに特徴的な分裂が生じることがクォークモデルを用いて予言されている。この発表では強磁場下でボトムバリオンΛb、Σb、がどのような質量スペクトルを示しているのかをクォークモデルを用いて計算した結果について報告する。計算する際にはアップクォークとダウンクォークがダイクォークを構成しているとして、ダイクォークとボトムクォークの二体問題として解く。
ηN系は閾値領域でN(1535)に強く結合することから、有限密度中にηを入射するとηのスペクトル関数は、ηとN(1535)-N-holeの二準位に対応する2つのピーク構造を持つ。このうち、真空中のηの質量より小さい位置に励起されるピークはη中間子原子核束縛状態に対応し、これに関する生成実験も行われてきた。これは、η自身の質量が媒質中で変化する効果ではなく、二準位の混合効果によるものである。一方で、南部Jona-Lasinio模型などにより有限密度中でηの質量が増加することも示唆されている。そこで本研究では、有限密度中でのηの質量自身の変化の可能性を考慮したとき、η及びN*(1535)がどのように観測されるのかについて調べる。
核子からの中間子光生成は、バリオンの構造とその励起スペクトルを理解するための重要なツールである。特に高励起状態が数多く存在する領域では、多重中間子光生成反応の重要性が増している。この反応ではΔ(1232)3/2+やN(1535)1/2-といった中間状態を経由する共鳴の連続崩壊を扱うことができる。このような過程を理解するためには微分断面積だけでなく偏極観測量も測定する必要がある。
BGOegg Phase-II実験ではほぼ全立体角を覆う電磁カロリーメータを用いて中間子の崩壊で生じる光子を全て捉えることで多重中間子光生成反応を同定することができる。また直線偏光光子ビームを用いて偏極観測量の測定を行う。
本講演では来年度行われる予定の液体水素標的を用いたBGOegg Phase-II実験について報告する。
ハドロン相互作用におけるグルーオンの果たす役割は不明な点が多い。ϕメソンと核子の相互作用ではグルーオン交換が支配的である。したがって、ϕn 相互作用への理解はグルーオンに対する理解を深める。現在 ϕn 相互作用について、3つのグループが矛盾する結果を主張しており、強いか弱いかもわかっていない。この状況を打破するために、E45実験で ϕn の閾値近傍での全反応断面積の測定を計画している。閾値近傍における π- p→ϕn 反応の全反応断面積を ϕn 散乱の影響を考慮した散乱方程式で計算した。このとき、低エネルギーの散乱パラメータを変化させ、全反応断面積の入射粒子 π^- の運動量依存性を調べた。本講演では、ϕn 相互作用の現状と閾値近傍における π- p→ϕn 反応の全反応断面積から散乱パラメータが決定できるかについて発表する。
KN散乱振幅を用いて、媒質中のストレンジを含むクォーク凝縮を評価できることが明らかになっている。KN散乱の実験データからI=1のKN散乱振幅が非常によく決定されている一方で、I=0のKN散乱振幅は十分に拘束されず、K+n弾性散乱の断面積は再現されていない。そこで、K+d散乱の実験データを用いてI=0のKN散乱振幅を決定することを目的として、K+d->KNN反応の計算を行っている。K-d反応の定式化に従って、K+d->KNN反応の散乱振幅を構築した。さらに、I=0のKN散乱振幅をより精度良く決定するために、KNおよびNN終状態相互作用の効果を取り入れた。K+d->KNN反応の散乱断面積を示し、終状態相互作用の効果について議論する。
The parameters which describe the scattering amplitudes near the thresholds (scattering length) of Sigma-N and Kba-N (I=1) is still a fascinating subject in hadronic physics. The K^-d → pi-Lambda-N reaction is one approach for detecting these parameters. This talk provides a result of theoretical analysis for the spectra of the reaction.
スカラーメソンにおいてストレンジネスを持つ粒子が持たない粒子に比べて質量が小さくなっているという現象がある。メソンを構成する構成子クォーク質量の大きさの大小が、メソンの質量の大小を大まかに決めると期待するのが自然だが、その反対のことが起こっているということで問題になっている。その解決方法がいくつかあるが、その中で今回はgk 項を取り入れる方法を用いる。この方法では、スカラーメソン構成に関わる相互作用において、ストレンジを持たないメソンについてはcurrent strange quark massの寄与が入り、一方でストレンジを持つメソンについてはcurrent up or down quark massの寄与が入るようにすることで解決されている。本研究は、その項の影響によってこれまでのNJL模型で求められてきたベクトルメソンの質量がどのようになるのかを確かめていく。
We study theoretically the semi-exclusive (p,dp) and (pi,pp) reactions for the formation of the eta(958) mesonic nucleus formation. The semi-exclusive measurements with the protons from eta(958) non-mesonic two-body absorption (eta(958)NN—>NN) are found to be quite important for the eta(958) bound state observation. We report the recent theoretical results.
The polarization of Xi- hyperons obtained from the (K^-, K^+) reaction provides crucial insights into the underlying reaction mechanism. In the absence of an S=-2 meson, there is no t-channel Born-term diagram in the (K^-, K^+) reaction. The forward-peaking differential cross-sections for the (K^-, K^+) reaction require high-spin hyperon resonances in the s channel and box diagrams involving two kaon exchanges. Measuring the polarization is essential for understanding the reaction amplitudes and determining the reaction mechanism. We present the results of the polarization measurement for Xi- hyperons produced in the p(K^-,K^+)Xi^- reaction at a beam momentum of 1.8 GeV/c. This measurement was based on approximately 800 Xi- events, providing significantly more data than previous experiments with old hydrogen bubble chambers.
"The hyperon puzzle of neutron stars refers to the problem that most of the equations of state with hyperons are not sufficiently stiff to support the observed massive neutron stars. One promising solution to the puzzle is that the three-body forces between a hyperon and medium nucleons produces such strong repulsion that Λ’s do not appear in neutron stars. The Λ single-particle potential [1] (Λ potential) in nuclear matter that fulfills the solution is calculated from chiral effective field theory with the three-body forces estimated via the decuplet saturation. To test the feasibility of the solution, the repulsive Λ potential at high densities should be verified by using experimental data. The consistency with the heavy-ion collision [2] and hypernuclear [3] data has been verified by one of the authors.
In this talk, we will discuss the Σ potential, which can be calculated by employing the same interactions as the Λ potential. By using the low-energy constants that reproduce the empirical value of the Λ potential, the Σ potential at the saturation density is found to vary by several tens of MeV, ranging from repulsion to attraction. Interestingly, it turns out that the low-energy constants can be chosen in such a way that Λ’s do not appear in neutron stars, and the empirical value of the Σ potential at the saturation density, 30 ± 20 MeV [4], is reproduced.
[1] D. Gerstung, N. Kaiser, and W. Weise, Eur. Phys. J. A 56 (2020) 175.
[2] Y. Nara, A. Jinno, K. Murase, and A. Ohnishi, Phys. Rev. C 106 (2022) 044902.
[3] A. Jinno, Y. Nara, K. Murase, and A. Ohnishi, Phys. Rev. C 108 (2023) 065803.
[4] A. Gal, E.V. Hungerford, and D.J. Millener, Rev. Mod. Phys. 88 (2016) 035004."
We present a novel unified approach to describe the dense symmetric nuclear matter by combining the quarkyonic matter framework with the parity doublet model. This integration allows for a consistent treatment of the transition from hadronic to quark degrees of freedom while incorporating chiral symmetry restoration effects. Our model introduces a chiral invariant mass for both baryons and constituent quarks, enabling a smooth crossover between hadronic and quark matter in symmetric nuclear matter. We derive the equation of state (EOS) for this hybrid system and investigate its thermodynamic properties. The model predicts a gradual onset of quark degrees of freedom at high densities while maintaining aspects of confinement.
The J-PARC E73 experiment aims to measure the hypertriton lifetime using the He3(K-, π0)H3Λ reaction, which uniquely enables the population of the hypertriton ground state due to spin non-flip dynamics. As a demonstration of this method’s precision, we have successfully measured the H4Λ lifetime, with results published in Physics Letters B 845 (2023) 138128. We plan to complete the physics data collection by early 2025. In this talk, I will present an overview of the scientific motivation, the experimental techniques employed, and an update on the current progress of the experiment.
"I would like to review a recent study on the structures of unstable nuclei and hypernuclei with cluster-orbital shell model (COSM). In light unstable nuclei, neutron-rich and proton-rich nuclei are investigated about their ground states and the excitation mechanism.
In hypernuclei, we recently predict many states of neutron-rich Lambda hypernuclei. In these studies, resonances are described with the correct boundary condition using the complex scaling."
"$\eta^{\prime}(958)$ meson has an exceptionally large mass compared with the other light pseudo-scalar meson nonets. The origin of the large mass is considered to have a close relation to the chiral symmetry breaking and the axial U(1) anomaly in the QCD. In a nuclear matter, where the chiral symmetry is partially restored, a mass reduction of an $\eta^{\prime}$ meson is predicted by several theoretical models. Since such a mass reduction leads to an attractive potential for the $\eta^{\prime}$ meson in a nucleus, the existence of bound states between $\eta^{\prime}$ mesons and nuclei (=$\eta^{\prime}$-mesic nuclei) has been suggested.
To search for $\eta^{\prime}$-mesic nuclei, we conducted missing-mass spectroscopy of $^{12}\mathrm{C}(p,d)$ reaction in a coincidence detection of protons from the two nucleon absorption decay of $\eta^{\prime}$-mesic nuclei using a large solid angle detector WASA at the fragment separator (FRS) in GSI in 2022 February. We made use of 2.5 GeV proton beams with an intensity of $3.0\times 10^8/s$ and a $^{12}\mathrm{C}$ target with a thickness of 4 g/cm$^{2}$. The momenta of the forward emitted deuterons were analyzed by the FRS and the protons with momenta of $\sim$1 GeV/$c$ from the decay of $\eta^{\prime}$-mesic nuclei with the WASA detector simultaneously.
This presentation will provide the experimental details and the current situation of the data analysis."
"There is presently no consensus on how the phi meson mass and width will
change once it is put in a dense environment such as nuclear matter.
While many theoretical works exist, connecting them with experimental measurements remains non-trivial task, as the phi meson in nuclear matter is usually produced in relatively high-energy pA reactions, which are generally non-equilibrium processes. In this talk, the status of recent theoretical research related to the behavior of the phi meson in nuclear matter is reviewed, with special focus on ongoing transport simulations of pA reactions in which the phi meson is produced in nuclei, which were (or will be) studied at KEK 325 and J-PARC E16 experiments."
核媒質のような高バリオン密度環境ではカイラル対称性が部分的に回復しハドロンの性質が変化すると考えられている。特にη'メソンはU_A(1)アノマリーとの関係を通して大きな質量減少が生じる可能性が多くの理論モデルにより指摘されている。LEPS2/BGOegg実験では高分解能電磁カロリメータを用いてη'→γγ崩壊の質量スペクトルを測定し、原子核中でのη'質量変化を直接捉えることを試みる研究を行っている。本講演では、2015-2016年に行ったPhase-I実験における炭素標的データの解析状況と、現在進行中のPhase-II実験の状況について報告する。
"ハドロンとは、強い相互作用をする粒子の総称である。陽子やπ中性子などは電荷を持っているため、強い相互作用に加えてクーロン相互作用が働いている。強い相互作用に比べてクーロン相互作用の束縛エネルギーは1/1000程度であるため、通常は無視して扱うことが多い。しかし近年の実験では、Χ(3872)の束縛エネルギーが40keV程度であることがわかっている[1]。これは他の多くのハドロンに比べて極端に小さく、クーロン相互作用の影響を考慮する必要があることを示唆している。
本研究では、井戸型モデルを用いて、クーロン相互作用を無視できない場合の束縛状態を考える。今回は、幅bの引力井戸型ポテンシャルの束縛解に引力のクーロンポテンシャルを追加した時の束縛エネルギーの変化を数値的に調べる。結果から、クーロン相互作用によって束縛エネルギーBが増加することがわかる。また、強い相互作用だけでは束縛解が存在しないポテンシャルで、新たに束縛解が生じる場合があった。表1に、V_0=-34[m^(-1) b^(-2) ]の時の束縛エネルギーをまとめる。この結果から、クーロン相互作用の影響は1つ目の束縛状態において最も大きく現れることが分かる。原因として、波動関数の広がりが関係していることが考えられる。"
"LHCbでccbarを含むPcペンタクォークバリオンがJ/ψ pチャンネルで観測された。このPc
の内部構造は、分子状態なのか空間的にコンパクトなマルチクォーク状態なのかはまだ明らか
ではない。チャームセクターに加えてストレンジセクターでも同様な状態が期待され、これらの
状態の統合的な理解でグルーオンのダイナミックスに対する知見が得られる。
そこでssbarを含むペンタクォークバリオンPsを観測するため、入射エネルギー1.6-2.4 GeV
で重水素標的でのφメソン光生成反応の断面積をSPring-8のLEPS施設で測定した。
終状態粒子K+K-pnのうちK+K-pを前方磁気スペクトロメータで検出し、中性子は欠損粒子
として同定し、φp不変質量分布で2.1GeV付近にピークが表されると期待されるPsを探索した。
本講演では、これに関する解析を報告する。"
We study the interaction between D and D* bar mesons using the effective model in which the properties of X(3872) have been reproduced well.
"We study the properties of the hadron-hadron potentials and quark-antiquark potentials from the viewpoint of the channel coupling[1]. We introduce the effective hadron-hadron potential with coupled to the quark channel.
As an application, we construct a coupled-channel model of $c\bar{c}$ and $D\bar{D}$ to describe exotic hadron $X(3872)$[2].
For the obtained nonlocal potentials, we apply two methods of the local approximation proposed previously, the formal derivative expansion and the derivative expansion in the HAL QCD method, by carefully examining the energy dependence of the potential.
We confirm that the local approximation by the HAL QCD method works better than the formal derivative expansion also for the energy-dependent potential. At the same time, we show that, in the HAL QCD method, the resulting phase shift is sensitive to the choice of the wavefunction to construct the local potential when the system has a shallow bound state such as $X(3872)$.
To investigate the internal structure of the $X(3872)$, we introduce the direct 4-point interaction of the hadron channel, in addition to the contribution of the coupling to the quark channel. We study the dominant compornent of the $X(3872)$ by annalyzing the wavefunctions, compositteness, and pole trajectories.
[1] I. Terashima and T. Hyodo, Phys. Rev. C 108, 035204 (2023).
[2] M. Takizawa and S. Takeuchi, PTEP 2013, 093D01 (2013)."
"Some hadrons are difficult to explain as normal hadrons made of quark-antiquark pairs or three quarks. These are called exotic hadrons. Since the Belle experiment discovered $X(3872)$ in 2003, more exotic hadrons containing charm quarks have been reported. Exotic hadrons likely have more complex structures than normal hadrons, but this is still uncertain.
The $X(3872)$ is one of the most well-known exotic hadrons and has been observed in many experiments. It has the same quantum numbers as $\chi_{c1}(2P)$, but its mass differs from the quark model's prediction. It is also very close in mass to the $D^{0}\bar{D}^{*0}$ threshold, with only a 0.04 MeV difference.
In this study, we analyze $\chi_{cJ}(2P)$ as a mixture of a hadronic molecule state, similar to a deuteron, and a bare $\chi_{cJ}(2P)$ core, comparing it to $X(3872)$ and others."
In 2022, the LHCb Collaboration announced the discovery of the doubly charmed tetraquark T^+{cc} in the 𝐷^0𝐷^0\pi^+ line shape. Using a model that simultaneously handles both the 𝐷𝐷^∗ molecular state and the cc\bar{u}\bar{d} compact state, we analyzed the 𝐷^0𝐷^0\pi^+ line shape, and obtained the mass and decay width of T^+{cc} as the S-matrix pole. Furthermore, to examine the internal structure of T^+{cc}, we calculated the compositeness and found that T^+{cc} has a molecule-like structure.
Recent accelerator experiments have reported unexpected states known as exotic hadrons, whose properties cannot be explained by the conventional picture. In the heavy quark sector, XYZ, Tcc and Pc have been reported since the discovery of X(3872). In this talk, we study $\bar{D}\Xi_{cc}$ pentaquark as a partner of $T_{cc}$ recently observed by the LHCb experiment. $T_{cc}$ tetraquark is a candidate of the $DD^*$ molecule. By replacing a $D$ meson with a doubly charm baryon $\Xi_{cc}$, being the superflavor partner of $D$, the existence of $\bar{D}\Xi_{cc}$ molecule is expected. We also discuss the role of interactions in the formation of these bound states.
This study proposes a comprehensive framework for exploring antiprotonic calcium atom spectroscopy through the application of the optical model. The strong shifts and level widths, which are key spectroscopic observables, have been calculated using the Dirac equation, incorporating realistic density profiles and various types of optical models. This presentation demonstrates the calculation results and explains the inferred relationships between nuclear structures and antiprotonic spectroscopy.
We will introduce a future plan of a precision X-ray spectroscopy experiment in the ELENA facility of CERN.
現在、茨城県那珂郡東海村にあるJ-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex) のハドロン実験施設内のK1.8-ビームラインにおいてE94実験の準備が進みつつある。E94実験では (π+, K+) 反応を用いてシングルΛハイパー核 (single-Λ hypernuclei) である7Li, 10B及び12Cを生成し、エネルギー分解能1MeV (FWHM) の高精度でΛハイパー核分光 (Λ-hypernuclear spectroscopy) を行う。反応点におけるπ+の運動量は反応点前方のK1.8-ビームラインで、K+の運動量はその点の後方のS-2S (Strangeness -2 Spectrometer) でそれぞれ測定し、質量欠損法から生成したハイパー核の質量・束縛エネルギーを計算する。このK+の情報を観測データから引き出すには粒子識別 (particle identification) をして数多くのバックグラウンドからK+の信号を取り出すことが必要となる。この粒子識別の際に用いられるのがチェレンコフ検出器であり、エアロゲル型とアクリル型を組み合わせて識別をする。反応前後にてπ+は1.05GeV/cで入射し、K+は中心運動量0.72GeV/cで飛び出す。この運動量を持つK+からチェレンコフ光を発生させるのに適した屈折率を持つのがアクリルであり、エアロゲル・アクリル両方で光るものをπ+やβ+等のバックグラウンド、アクリルのみで光るものをK+として識別する。今回はこのアクリルチェレンコフ検出器の開発状況について発表を行う。
"We calculated the gravitational form factors (GFFs) of pions, A(t) and D(t), using a top-down holographic QCD approach, incorporating momentum transfer dependence.[1] The GFFs of hadrons are of great interest as they provide insights into the internal stress distribution, potentially shedding light on the mechanisms of hadron formation in QCD. Our findings indicate that the absolute value of D(t) decreases more rapidly than that of A(t) which qualitatively aligns with lattice QCD results. Additionally, we determined the forward limit of these GFFs, specifically the D-term, which is -1.
[1] D. Fujii, A. Iwanaka, and M. Tanaka, arXiv:2407.21113 [hep-ph] (2024)."
ダイニュートロンは、数10keVだけギリギリ束縛しないバーチャル状態であることが知られている。そこに、Λを加えたΛ+n+n系が束縛するのかどうかは興味ある課題であるが、各サブシステムがs波であり、全角運動量もS波であるので、理論的に幅の広い共鳴ポールやバーチャル状態のポールを求めるのは困難である。この分析が可能な方法としては、結合定数解析接続法(ACCC)が提案されているが、本発表ではACCCと複素座標スケーリング法(を用いて、Λ+n+nの三体S波状態の分析結果に関する発表を行う。
"Quarks and gluons (collectively called partons in the high energy regimes) are fundamental degrees of freedom of QCD and are deeply confined in hadrons and nuclei. Their connections are mapped into parton distribution functions (PDFs), which can be extracted from QCD global fit to experimental data. Meanwhile, the emergent hadronization of partons is encoded in fragmentation functions (FFs) similar to PDFs. Those PDFs and FFs are closely related, and their information can be extracted simultaneously from data through semi-inclusive deep-inelastic scattering in lepton-hadron scatterings. The future U.S. electron-ion collider (EIC) could provide essential playgrounds for pursuing emergent hadronization dynamics. This could impact other physics, such as studying multidimensional parton distributions in the nucleon and nuclei.
In this talk, after briefly recapturing essential physics at the U.S. EIC, we will show theoretical descriptions of light hadron production and heavy quarkonium production in QCD factorization in lepton-hadron scatterings. Then, we will discuss how the EIC can help us understand emergent hadron production, especially exotic states of heavy quarkonium in vacuum and nuclear medium."
QGP物理や重イオン衝突を使ったハドロン物理に関する最近の動向と今後の展望に関して議論します。