ηN系は閾値領域でN(1535)に強く結合することから、有限密度中にηを入射するとηのスペクトル関数は、ηとN(1535)-N-holeの二準位に対応する2つのピーク構造を持つ。このうち、真空中のηの質量より小さい位置に励起されるピークはη中間子原子核束縛状態に対応し、これに関する生成実験も行われてきた。これは、η自身の質量が媒質中で変化する効果ではなく、二準位の混合効果によるものである。一方で、南部Jona-Lasinio模型などにより有限密度中でηの質量が増加することも示唆されている。そこで本研究では、有限密度中でのηの質量自身の変化の可能性を考慮したとき、η及びN*(1535)がどのように観測されるのかについて調べる。
核子からの中間子光生成は、バリオンの構造とその励起スペクトルを理解するための重要なツールである。特に高励起状態が数多く存在する領域では、多重中間子光生成反応の重要性が増している。この反応ではΔ(1232)3/2+やN(1535)1/2-といった中間状態を経由する共鳴の連続崩壊を扱うことができる。このような過程を理解するためには微分断面積だけでなく偏極観測量も測定する必要がある。
BGOegg Phase-II実験ではほぼ全立体角を覆う電磁カロリーメータを用いて中間子の崩壊で生じる光子を全て捉えることで多重中間子光生成反応を同定することができる。また直線偏光光子ビームを用いて偏極観測量の測定を行う。
本講演では来年度行われる予定の液体水素標的を用いたBGOegg Phase-II実験について報告する。
ハドロン相互作用におけるグルーオンの果たす役割は不明な点が多い。ϕメソンと核子の相互作用ではグルーオン交換が支配的である。したがって、ϕn 相互作用への理解はグルーオンに対する理解を深める。現在 ϕn 相互作用について、3つのグループが矛盾する結果を主張しており、強いか弱いかもわかっていない。この状況を打破するために、E45実験で ϕn の閾値近傍での全反応断面積の測定を計画している。閾値近傍における π- p→ϕn 反応の全反応断面積を ϕn 散乱の影響を考慮した散乱方程式で計算した。このとき、低エネルギーの散乱パラメータを変化させ、全反応断面積の入射粒子 π^- の運動量依存性を調べた。本講演では、ϕn 相互作用の現状と閾値近傍における π- p→ϕn 反応の全反応断面積から散乱パラメータが決定できるかについて発表する。
KN散乱振幅を用いて、媒質中のストレンジを含むクォーク凝縮を評価できることが明らかになっている。KN散乱の実験データからI=1のKN散乱振幅が非常によく決定されている一方で、I=0のKN散乱振幅は十分に拘束されず、K+n弾性散乱の断面積は再現されていない。そこで、K+d散乱の実験データを用いてI=0のKN散乱振幅を決定することを目的として、K+d->KNN反応の計算を行っている。K-d反応の定式化に従って、K+d->KNN反応の散乱振幅を構築した。さらに、I=0のKN散乱振幅をより精度良く決定するために、KNおよびNN終状態相互作用の効果を取り入れた。K+d->KNN反応の散乱断面積を示し、終状態相互作用の効果について議論する。
The parameters which describe the scattering amplitudes near the thresholds (scattering length) of Sigma-N and Kba-N (I=1) is still a fascinating subject in hadronic physics. The K^-d → pi-Lambda-N reaction is one approach for detecting these parameters. This talk provides a result of theoretical analysis for the spectra of the reaction.
スカラーメソンにおいてストレンジネスを持つ粒子が持たない粒子に比べて質量が小さくなっているという現象がある。メソンを構成する構成子クォーク質量の大きさの大小が、メソンの質量の大小を大まかに決めると期待するのが自然だが、その反対のことが起こっているということで問題になっている。その解決方法がいくつかあるが、その中で今回はgk 項を取り入れる方法を用いる。この方法では、スカラーメソン構成に関わる相互作用において、ストレンジを持たないメソンについてはcurrent strange quark massの寄与が入り、一方でストレンジを持つメソンについてはcurrent up or down quark massの寄与が入るようにすることで解決されている。本研究は、その項の影響によってこれまでのNJL模型で求められてきたベクトルメソンの質量がどのようになるのかを確かめていく。
This study proposes a comprehensive framework for exploring antiprotonic calcium atom spectroscopy through the application of the optical model. The strong shifts and level widths, which are key spectroscopic observables, have been calculated using the Dirac equation, incorporating realistic density profiles and various types of optical models. This presentation demonstrates the calculation...
We will introduce a future plan of a precision X-ray spectroscopy experiment in the ELENA facility of CERN.
現在、茨城県那珂郡東海村にあるJ-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex) のハドロン実験施設内のK1.8-ビームラインにおいてE94実験の準備が進みつつある。E94実験では (π+, K+) 反応を用いてシングルΛハイパー核 (single-Λ hypernuclei) である7Li, 10B及び12Cを生成し、エネルギー分解能1MeV (FWHM) の高精度でΛハイパー核分光 (Λ-hypernuclear spectroscopy) を行う。反応点におけるπ+の運動量は反応点前方のK1.8-ビームラインで、K+の運動量はその点の後方のS-2S (Strangeness -2 Spectrometer)...
"We calculated the gravitational form factors (GFFs) of pions, A(t) and D(t), using a top-down holographic QCD approach, incorporating momentum transfer dependence.[1] The GFFs of hadrons are of great interest as they provide insights into the internal stress distribution, potentially shedding light on the mechanisms of hadron formation in QCD. Our findings indicate that the absolute value of...