Speaker
衣川 友那
(東京都立大学)
Description
我々は、不安定状態の複合性の新しい解釈を提案し、その解釈を用いて閾値近傍の共鳴状態の内部構造を研究した。近年、エキゾチックハドロンが閾値近傍に多数発見されていることから、閾値近傍の状態の内部構造に興味がもたれている。状態の内部構造を定量的に特徴づける量である複合性を用いた研究から、閾値より下の浅い束縛状態は低エネルギー普遍性より複合的な成分が支配的であると知られている。一方で、閾値より上の共鳴状態の複合性は定義より複素数になり、内部構造の確率的解釈が容易でないという問題があった。この研究は、複素数の複合性の確率的解釈を提案し、それを用いて閾値近傍の共鳴状態の性質を明らかにすることを目的とする。
まず、有効レンジ展開を用いて閾値近傍の共鳴状態を記述し、共鳴状態の性質を低エネルギー普遍性の観点から議論する。次に、共鳴状態の不定性を考慮した内部構造の分類方法を導入し、複素数の複合性の確率的解釈方法を提案する。さらに、提案した確率的解釈方法を有効レンジ展開で記述される共鳴状態に応用し、閾値近傍の共鳴状態は、束縛状態とは異なり複合的ではないことを示す。