RARiS研究会C038 「加速器を用いたガンマ線ビームの生成、基礎科学と産業分野への利用」

Asia/Tokyo
東北大学 先端量子ビーム科学研究センター

東北大学 先端量子ビーム科学研究センター

Description

開催趣旨

レーザーコンプトン散乱をはじめとした技術的な進歩により、加速器施設においてガンマ線を高強度ビームとして生成することが可能となり、MeVからGeVに渡る広いエネルギー領域でその利用が進んでいる。基礎科学においては、光核反応やハドロン光生成などの物理実験だけでなく、近年では光渦やデルブリュック散乱などの研究が進展し、偏光などと合わせてガンマ線ビームの特徴を活かした利用が盛んとなっている。また、非破壊検査等の産業技術への応用研究も行われ、多岐に渡る分野で利用されるに至っている。ガンマ線ビーム生成に関する技術開発も各所で活発であり、アンジュレータ放射光のコンプトン散乱による高エネルギー化や、様々なレーザー・加速器技術を駆使した大強度化、光源のコンパクト化などが試みられている。本研究会では、分野横断的に最近の研究・開発状況を概観し、互いの知見に基づいて意見交換を行い、ガンマ線ビームの生成と利用を一層発展させていくことを目的とする。更に、コンプトン散乱によるガンマ線ビーム生成やアンジュレータの開発で多大な功績を残され、2023年7月に逝去された大熊春夫先生を偲ぶセッションを設け、大熊先生への感謝と追悼の意を表する場とする。

研究会世話人(五十音順)

大垣英明 (京都大学 エネルギー理工学研究所)、柏木茂 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)、小泉光生 (日本原子力研究開発機構 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター)、佐波俊哉 (高エネルギー加速器研究機構 放射線科学センター)、平義隆 (分子科学研究所 極端紫外光研究施設)、田村和宏 (高輝度光科学研究センター 加速器部門)、[代表] 羽島良一 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)、早川岳人 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)、宮部学 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)、村松憲仁 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)

開催日時 2024年9月10日(火) 13:00 ~ 9月11日(水) 16:05
開催場所 東北大学 先端量子ビーム科学研究センター 三神峯事業所 
 三神峯ホール(Zoomオンラインとのハイブリッド開催のためオンライン参加可)
問合せ先  rarisws-c038@raris.tohoku.ac.jp
Participants
  • HASHIMOTO Toshikazu
  • Kairo Toho
  • Koga James
  • Kojima Ginga
  • Maeda Mizuho
  • Makii Hiroyuki
  • Miyabe Manabu
  • Moriya Katsuhiro
  • Nanbu Kenichi
  • Shigeru Kashiwagi
  • Yamazaki Hirohito
  • Yokotani Hiroshi
  • 丸山 智幸
  • 伊達 伸
  • 佐波 俊哉
  • 加藤 新一
  • 吉田 昌弘
  • 大垣 英明
  • 大谷 将士
  • 宇都宮 弘章
  • 宮本 修治
  • 小泉 光生
  • 小泉 昭久
  • 山本 樹
  • 岡部 雅大
  • 峰原 英介
  • 川瀨 啓悟
  • 平 義隆
  • 平川 悠人
  • 早川 岳人
  • 時安 敦史
  • 本多 真紀
  • 村上 昌史
  • 村松 憲仁
  • 松村 裕二
  • 桂川 仁志
  • 桐田 勇利
  • 横北 卓也
  • 民井 淳
  • 沢村 勝
  • 清水 肇
  • 渡辺 裕夫
  • 渡邉 瑛介
  • 田村 和宏
  • 神門 正城
  • 竹下 隼人
  • 羽原 英明
  • 羽島 良一
  • 豊川 弘之
  • 足立 智
  • 鈴木 伸介
  • 鈴木 康明
  • 青戸 宏樹
  • 静間 俊行
  • Tuesday, September 10
    • 1
      世話人代表挨拶
    • 2
      コンプトン光源の過去、現在、未来

      セッション1・講演1
      「コンプトン光源の過去、現在、未来」
      羽島良一(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

      講演要旨
      コンプトン光源は、高エネルギー電子ビームとレーザーの衝突、散乱でガンマ線やX線を発生する装置である。準単色かつエネルギー可変のガンマ線源として、これまで、さまざまな加速器施設でコンプトン光源の開発と利用が行われ、また、加速器とレーザー技術の進歩により、ガンマ線の狭帯域化、高強度化が進んできた。本講演では、コンプトン光源の歴史を振り返るとともに、今後を展望する。

      Speaker: 羽島良一 (量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所)
    • 3
      超短パルスガンマ線の発生と利用研究

      セッション1・講演2
      「超短パルスガンマ線の発生と利用研究」
      平義隆(分子科学研究所 極端紫外光研究施設)

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: 平義隆 (分子科学研究所 極端紫外光研究施設)
    • 4
      フラットLCSγ線の生成と応用

      セッション1・講演3
      「フラットLCSγ線の生成と応用(Generation of Flat-Laser Compton Scattering Gamma-ray Beam for Multiple Isotope Imaging in UVSOR)」
      大垣英明(京都大学 エネルギー理工学研究所)

      Speaker: 大垣英明 (京都大学 エネルギー理工学研究所)
    • 5
      磁気コンプトン散乱を用いた物性研究 KEK・AR, SPring-8, New SUBARUにおける実験とLCSガンマ線源への期待

      セッション1・講演4
      「磁気コンプトン散乱を用いた物性研究
       KEK・AR, SPring-8, New SUBARUにおける実験とLCSガンマ線源への期待」
      小泉昭久(兵庫県立大学 理学研究科)

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: 小泉昭久 (兵庫県立大学 理学研究科)
    • 6
      LCSγ線と制動放射線による核構造研究

      セッション1・講演5
      「LCSγ線と制動放射線による核構造研究」
      静間俊行(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

      Speaker: 静間俊行 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)
    • 3:35 PM
      休憩
    • 7
      SPring-8の硬X線のコンプトン散乱の試み

      特別セッション「大熊先生を偲ぶ」・講演1
      「SPring-8の硬X線のコンプトン散乱の試み」
      鈴木伸介(大阪大学 核物理研究センター/高輝度光科学研究センター(JASRI))

      Speaker: 鈴木伸介 (大阪大学 核物理研究センター/高輝度光科学研究センター(JASRI))
    • 8
      SPring-8のMeVガンマ線生成 - 大熊門下生として -

      特別セッション「大熊先生を偲ぶ」・講演2
      「SPring-8のMeVガンマ線生成 - 大熊門下生として -」
      川瀬啓悟(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

      講演要旨
      SPring-8では1998年のGeVガンマ線ビームライン(LEPS, BL33-LEP)の運用開始時にはすでに、それと平行、後続する形で大熊さんが中心となってMeVガンマ線光源の開発が進められていました。
      私は2003年頃から本格的に本計画に参加し、2005年にMeVガンマ線生成の確認、その後、本研究を学位論文としたまとめさせて頂きました。この発表では、逆コンプトン散乱によるMeVガンマ線源の開発を中心に、さらにその後も続いた大熊さんとのご縁とご指導頂いた思い出を紹介します。

      Speaker: 川瀬啓悟 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)
    • 9
      ニュースバル軟X線を用いた逆コンプトン散乱ガンマ線の生成

      特別セッション「大熊先生を偲ぶ」・講演3
      「」
      宮部学(東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)

      Speaker: 宮部学 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)
    • 10
      大熊春夫先生と共に行ったアンジュレータ開発

      特別セッション「大熊先生を偲ぶ」・講演4
      「大熊春夫先生と共に行ったアンジュレータ開発」
      山本樹(高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所)

      Speaker: 山本樹 (高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所)
    • 7:00 PM
      懇親会
  • Wednesday, September 11
    • 11
      Theoretical Calculations of higher-order effects in Delbrück scattering

      セッション2・講演1
      「Theoretical Calculations of higher-order effects in Delbrück scattering」
      ジェームズ・コーガ(量子科学技術研究開発機構)
      英語による講演。質疑応答は英語・日本語のどちらも可。

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: ジェームズ・コーガ (量子科学技術研究開発機構)
    • 12
      光子渦の生成と原子核による光渦吸収反応の理論研究

      セッション2・講演2
      「光子渦の生成と原子核による光渦吸収反応の理論研究」
      丸山智幸(日本大学 生物資源科学部)

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: 丸山智幸 (日本大学 生物資源科学部)
    • 13
      高エネルギー電子加速器と高強度レーザーによる非線形QED実験の提案

      セッション2・講演3
      「高エネルギー電子加速器と高強度レーザーによる非線形QED実験の提案」
      神門正城(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: 神門正城 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)
    • 10:30 AM
      休憩
    • 14
      電子線形加速器を利用したRI製造

      セッション3・講演1
      「電子線形加速器を利用したRI製造」
      横北卓也(東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)

      講演要旨
      放射性同位体 (RI) は、トレーサー利用として、理学、工学、環境学、医薬学といった幅広い分野で利用されており、近年、加速器を利用したRI製造研究が進められている。加速器によるRI製造では、RIの製造方法として、核反応及び照射方法の研究開発が必要である。また、RIを利用した応用研究では、比放射能の高いRIが必要となることがあり、そのための化学分離方法も研究開発されている。本発表では、RI製造に関する研究開発方法及び、東北大学先端量子ビーム科学研究センターの大強度電子線形加速器を利用したRI製造について紹介する。

      Speaker: 横北卓也 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)
    • 15
      高エネルギーX線CTを用いた放射性廃棄物の非破壊識別方法の開発

      セッション3・講演2
      「高エネルギーX線CTを用いた放射性廃棄物の非破壊識別方法の開発」
      村上昌史(大阪大学 放射線科学基盤機構)

      講演要旨
      我が国におけるこれまでの研究開発によって発生し、現在保管されている膨大な数の低レベル放射性廃棄物を埋設処分するためには、適切な形態(廃棄体)にする必要がある。廃棄体の製作にあたっては、埋設施設の廃棄物受入基準により処分できる量が制限される物質、例えば鉛や水銀等の重金属や可燃物があれば、重金属類は除去し、可燃物も混入量を抑えるように分別する必要がある。現在、圧縮後に保管されている廃棄物からこれらの物質を取り除くためのドラム缶の分別作業が実施されているが、多大な労力と時間がかかることが課題となっている。非破壊検査手法を用いて容器内の処分制限物質を識別・定量評価し、分別作業の必要性を判断することで、作業量が大きく削減されることが期待される。本研究では、実際の廃棄物を模擬して製作した鉛、水銀、電池および可燃物を含むサンプルに対して、産業用の高エネルギーX線CT装置(最大9 MeV)を用いて容器全体のCT画像を取得した。これらのCT画像に画素値(密度)及び3次元の形状に基づく識別、深層学習モデルを適用し、容器内部の対象物を識別・評価した内容について紹介する。

      Speaker: 村上昌史 (大阪大学 放射線科学基盤機構)
    • 16
      レーザーコンプトン散乱ガンマ線による放射性廃棄物の選択的核変換

      セッション3・講演3
      「レーザーコンプトン散乱ガンマ線による放射性廃棄物の選択的核変換」
      早川岳人(量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)

      講演要旨
      アップロードされたファイルをご覧ください。

      Speaker: 早川岳人 (量子科学技術研究開発機構 関西光量子科学研究所)
    • 12:30 PM
      昼食
    • 17
      SPring-8 LEPS2におけるGeVガンマ線生成とハドロン光生成実験

      セッション4・講演1
      「SPring-8 LEPS2におけるGeVガンマ線生成とハドロン光生成実験」
      村松憲仁(東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)

      講演要旨
      SPring-8のLEPS2ビームラインでは、4台の紫外レーザー同時入射によるレーザーコンプトン散乱で1.3~2.4 GeVまでの標識化光子ビームを生成・運用している。同期型パルスレーザーを用いた新たなビーム生成手法の開発や偏光・指向性・強度・プロファイルなどのビーム特性について最近のトピックスを中心に議論する。また、ユニークな特徴を持つ光子ビームを活かして推進している2つのハドロン光生成実験を概観し、ハドロン構造や質量の起源に関する研究で得られた最新の物理成果について紹介する。

      Speaker: 村松憲仁 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)
    • 18
      ガンマ線を使った素粒子標準模型を超えた物理の探索

      セッション4・講演2
      「ガンマ線を使った素粒子標準模型を超えた物理の探索」
      時安敦史(東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)

      講演要旨
      素粒子物理学は標準模型で説明されているが、相互作用を統一するためには標準模型を超える発見が求められている。その方法として、標準模型を超える理論で予言される未発見粒子(アクシオンや暗黒光子など)の実験的発見がある。これらの粒子はクォークやレプトンとほとんど相互作用しないため探索が難しいが、ガンマ線を用いることで可能と考えられている。
      ガンマ線は純粋なエネルギーとして新粒子探索に適している。例えば、米国ジェファーソン研究所のGlueX実験では高エネルギーガンマ線を用いて新粒子探索が行われている。また、RARiSでも高エネルギーガンマ線や大強度電子線を用いた探索実験が進行中である。
      本講演では、ガンマ線を用いた標準模型を超えた物理の探索の現状と可能性について紹介する。

      Speaker: 時安敦史 (東北大学 先端量子ビーム科学研究センター)
    • 19
      上海ガンマ線源と研究利用

      セッション4・講演3(リモート)
      「上海ガンマ線源と研究利用」
      宇都宮弘章(甲南大学 理工学部)

      講演要旨
      上海シンクロトロン放射光施設にガンマ線ビームラインSLEGS(上海レーザー電子ガンマ線源)が設置されている。SLEGSで生成されるガンマ線ビームの性能(ガンマ線のエネルギー分布と強度)について報告し、宇宙核物理と原子核物理の研究課題をいくつか紹介する。

      Speaker: 宇都宮弘章 (甲南大学 理工学部)
    • 20
      PANDORAプロジェクト: 軽核の光核反応の系統的理解と実験的アプローチ

      セッション4・講演4(リモート)
      「PANDORAプロジェクト: 軽核の光核反応の系統的理解と実験的アプローチ」
      民井淳(大阪大学 核物理研究センター)

      講演要旨
      光核反応の研究は、核構造の解明や天体物理学的プロセスの理解に重要な役割を果たし、さらにガンマ線を用いた多くの応用にとっても不可欠です。PANDORA(Photo-Absorption of Nuclei and Decay Observation for Reactions in Astrophysics)プロジェクト[1]は、質量数60以下の軽核における光核反応を、実験的および理論的に系統的に理解することを目指しています。
       本プロジェクトでは、RCNPおよびiThemba LABSでの陽子散乱を通じた仮想光子交換励起と、ELI-NPにおけるレーザーコンプトン散乱(LCS)による高強度実光子励起を使用して標的核を励起します。これにより、崩壊粒子とガンマ線を検出し、粒子崩壊閾値から巨大双極子共鳴までの励起エネルギー範囲をカバーし、光吸収断面積と崩壊分岐比を測定します。
       反対称化分子動力学、平均場モデル、大規模シェルモデル、第一原理計算などの複数の核モデルを用いて、光核反応の系統的な振る舞いを予測します。PANDORAプロジェクトの第一目的は、超高エネルギー宇宙線(UHECR)核が銀河間伝播中にエネルギーと質量を失うメカニズムを解明することです。
       ピエール・オージェやテレスコープアレイなどの大型宇宙線エアシャワー観測所によって、10の20乗eVを超えるUHECRが地球上で観測されていますが、その起源、加速機構、組成は未解明のままです。最近の解析では、最高エネルギーのUHECRの平均質量が陽子と鉄の間にあることが示唆されています。UHECR核は、主に宇宙マイクロ波背景放射の光子との光核励起に続いて粒子を放出することでエネルギーと質量を失うと予測されています。したがって、光吸収断面積と崩壊分岐比を理解することは、UHECRのエネルギーと質量の進化を解釈するために不可欠です。
       本研究会では、RCNPでの陽子散乱によるPANDORAプロジェクトの最初の実験結果を紹介します。また、LCSによる高輝度高分解能準単色ビームを用いた実験の重要性と、ELI-NP施設の現状についても報告します。

      [1] A. Tamii et al., PANDORA White Paper, Euro. Phys. J. A. 59, 208 (2024).

      Speaker: 民井淳 (大阪大学 核物理研究センター)
    • 21
      閉会の辞(世話人代表)